今年3月末、モバイルアトリビューションとマーケティングアナリティクスのプラットフォームを提供するAppsFlyerが、最新の「AppsFlyerパフォーマンスインデックス(第10版)」を発表しました。この中で、Mintegralはグローバルパフォーマンスインデックスで第6位にランクインされ、ランキングトップ10のうち唯一の中国企業になりました。またグローバルグロースインデックスでは第2位にランクインし、半年のインストールシェアで183%の成長をしました。Mintegralの親会社であるMobvistaの財務諸表のデータでは、2019年、Mintegralの代表的な事業であるプログラマティック広告業務が事業の成長を牽引しており、収益の成長は40.8%に達しています。一方、Mintegral SDKに接続するアプリの数も著しく増加しており、2018年同期の6,900件から26,000件へと大躍進し、DAUは3.8億から5億に伸びています。
以前、Mobvistaグループの総裁・曹暁歓氏はMorketingのインタビューの中で、MobvistaはMintegralに過去4年間で累計10億もの投資をしており、そのうちの大部分がプロダクトの研究開発への投資であると語っていました。
そのような投資を受け、Mintegralはどのような製品技術の開発を行い、事業成長を実現したのでしょうか?どのように製品技術のイノベーションを利用して業界に価値をもたらしたのでしょうか?MorketingはMintegralのシニアプロダクトディレクター・王春雨氏に、Mintegralの製品技術戦略についてインタビューを行いました。
Mintegralシニアプロダクトディレクター・王春雨氏
広告収益化で成長に弾みを付ける
王春雨氏によれば、Mintegralのプロダクト設計は広告収益化をコアとして展開されています。広告収益化のSDK及びSSP(サプライサイドプラットフォーム)はMintegral設立後の最初のプロジェクトであり、その後、次第にサプライサイドからデマンドサイドのフルスタックプログラマティック広告が形成されました。
継続的な製品の充実の過程で、Mintegralは次のような原則を守り続けています。それは、広告のわずらわしさをできるだけ減らし、ユーザーがよりよいエクスペリエンスを得て、一層広告とのインタラクション(相互作用)を望むようにすることにより、広告主がよりよいコンバージョン効果を得て、さらにはディベロッパーの収益を向上させることです。これはMintegralの成長に弾みを付ける重要な起点とも言えます。
1.長期的なユーザーエクスペリエンスの最重要視
王春雨氏は、Mintegralの製品理念においては、どのような製品や機能を開発するにしても、ユーザーエクスペリエンスが最優先されるべきです、と語ります。現在、エクスペリエンスの最適化、広告のわずらわしさの低減のため、Mintegralは次の3つの面で努力しています。
第一に、Mintegralはディベロッパーに対し、可能な限り慎重な広告スペースの設定、リワード動画、インターステイシャル動画といった形式の採用、アプリ使用中にちょうど良いノードで広告が自然に露出することを提案しています。そうすることによって、ユーザーは広告と能動的にインタラクションを行うよう誘導されます。
第二に、クリエイティブはユーザーエクスペリエンスを向上させるカギとなることが重要です。インタラクティブ広告はよりフレンドリーなユーザーエクスペリエンスの提供が可能で、ユーザーを引きつけて広告との間に能動的なインタラクションを発生させることができます。ユーザーのペインポイント(pain point)に照準を合わせ、彼らのニーズを満たすインタラクティブ広告を、効率よく、迅速に配信します。そのためにMintegralはクリエイティブの中のエレメントに対して埋め込み型のモニタリングを行い、自動化ツールによってエレメントをフレキシブルに調整し、ディテールを最適化して、迅速に多くのバージョンを生み出すことができます。現在、Mintegralのリワード動画とインターステイシャル広告のトラフィックのうち、既に50%近くのインプレッションをプレイアブル広告が占めています。
第三に、Mintegralは広告表示に多様化テンプレートを応用し、ユーザーに多くの広告の選択肢を提供している。Mintegral内部にはリアルタイムフレームワークをもとに多元化、カスタマイズされた広告推奨モデルがあり、ユーザーのリアルタイムの行動データをもとに学習し、広告形式、広告クリエイティブ、広告テンプレートなどの要素について最適な組み合わせを行うことができます。ユーザーがある広告に興味を示さない場合には、他の広告の選択肢を提供してユーザーの興味に適した広告のマッチングを続け、ユーザーが見飽きないよう、ユーザーと広告とのインタラクションを刺激することもできます。
2.より多くの広告リソース導入と新技術の常時サポート
ユーザーエクスペリエンスの向上だけでなく、広告収益の最大化も、ディベロッパーが非常に気にかける問題でした。
2019年初め、Mintegralは自社製のプログラマティック広告取引プラットフォームMintegral Ad Exchangeを打ち出し、直接提携するディベロッパーのトラフィックをオープンな取引市場に接続しました。そして1年以内にMintegral Ad Exchangeに10社以上の業界大手のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を導入し、関連する広告リソースをさらに開拓しました。同時に、MintegralはApp-ads.txt、Sellers.json及びSupplyChain ObjectといったIABの複数の技術規格のサポートを実現。OM SDK認証を取得してトラフィックの透明性を確保し、より多くの広告主の入札参加を促しました。このほか、トラフィック形式では、広告パターンを拡充しました。それまで動画広告がメインでしたが、業界内のすべての広告パターンの全面サポートへとグレードアップし、より包括的な広告シナリオを構築することでディベロッパーのトラフィックの価値を高めました。
最後に、これが最も重要な点ですが、Mintegral SDKとディベロッパープラットフォームは近年人気のアプリ内入札(In-app Bidding)技術を率先してサポートする初の中国のプラットフォームとなっています。「これはまさにディベロッパーの広告収益を最大化できる技術です。今後、アプリ内入札技術の全面的な採用は業界発展の必然的なトレンドとなるでしょう。」と王春雨氏は語りました。
「アプリ内入札」が今後のトレンドに
アプリ内入札は先進的なプログラマティック広告入札技術です。この技術により、多くの広告ソースがディベロッパーのアプリ内広告インベントリに同時に入札できるようになり、最高額を付けた者がその回の広告表示のチャンスを得ることになります。こうして、ディベロッパーはより多くの収入を獲得できるようになり、広告主にとってもより公平な機会がもたらされます。
また、アプリ内入札モデルは直接パブリッシャーの収益を向上させることができ、毎回のリクエストがもたらす広告収益を明らかにすることも可能になります。同時に、パブリッシャーはそうしたデータを収集し、後続のプロモーションの中でより高い収益が見込めるユーザーを「シードユーザー」として、類似する高価値のユーザーを探して収益化をはかることでLTV全体を高めることができます。
一方で、アプリ内入札モデルは、データを通じて広告主の予算がどのチャンネルとユーザーに費やされたかを明確にし、ユーザーのコンバージョンと行動を総合的に分析して、後続の広告投入を一層最適化することができます。アプリ内入札モデルは広告主に対してトラフィック効率と広告入札過程の透明性を最大限に高めることができます。
ただし、王春雨氏は、目下のところアプリ内入札の全面的な普及は容易ではないと語ります。アプリ内入札と従来のウォーターフォールモデルは業界内でしばらくは共存するといい、その主な根拠は次のとおりです。
まず、大手の一部の広告プラットフォームが現在のところ未だにアプリ内入札モデルをサポートしておらず、しばらくは入札に参加できそうにないということ。もしも今、全面的にアプリ内入札を実施すれば、ディベロッパーが広告収益の損失をある程度被ることになります。
次に、国内外を問わず、優れたメディアにはやはり一定のプレミアムが存在するということです。ウォーターフォールモデルの順位トップの保証価格は、アプリ内入札モデルでの支出よりもかなりの確率で高くなりますが、会社の宣伝のためならば、一部の広告主は依然としてそうしたプレミアムを支払うことを望みます。
最後に、アプリ内入札モデルの幅広い利用は、業界全体の推進にかかっているということです。
ただし解釈次第では、アプリ内入札技術の普及は業界のエコロジー化に積極的な促進作用を果たします。つまり、ディベロッパーはより多くの収益を獲得し、広告主の出費はより透明になり、広告プラットフォームもより一層自身の能力を高めることができます。
また、インターネット広告業界が発展するのにともない、従来型の広告販売の比率は低くなり、広告主の予算消化の実態に関する監視制御の要求も強くなってきており、業界はさらなる透明化・オープン化の方向へと進みつつあります。アプリ内入札はこうした特徴に順応し、業界の発展の方向にぴったりと符合しています。業界発展の趨勢となるのも当然です。
また、王春雨氏は次のように付け加えています。「アプリ内入札は既にMintegralに成果をもたらしています。過去1年、Mintegral SDKを通じて自主的にアクセスしたディベロッパーの数は著しく増えており、一方で我々も、ironSource、AppLovinといったMaxプラットフォーム、MoPubなどの業界大手の統合プラットフォームに統合されることに成功しています。その要因のひとつが、Mintegralが率先してアプリ内入札技術を採用していることなのです。」
Mintegralアプリ内入札のトラフィックの推移
アプリ内入札がMintegralにもたらした最も明確な価値は、トラフィックプールの拡大です。ウォーターフォールモデルが一部のリクエストしか受けられないのとは異なり、業界が全面的にアプリ内入札モデルの使用を開始すれば、Mintegralはすべてのトラフィックリクエストを受けることができます。そして広告主には多くの選択の余地が生まれ、選択可能な範囲内にすべてのターゲットユーザーが現れることになります。
収益評価においては、ウォーターフォールはある順位でのひとまとまりのユーザーの収益状況について大まかな評価を行うのみで、収益がプラスになると保証すれば済みます。一方、アプリ内入札は、毎回のリクエストの背後にいるユーザーについて、より正確な識別を行い、相対的に正確な広告のプッシュを保証することを前提に、適正な価格設定を確保しています。このため、アプリ内入札では広告プラットフォームの技術的な実力、アルゴリズムモデル及びデータの蓄積が一層試されることになります。
絶えず蓄積される膨大なデータにもとづき、Mintegralはアプリ内入札において正確にユーザーの価値を評価することができます。例えば、5億を超えるSDKのDAU、広告活動で蓄積されたファースト、セカンド、サードパーティのユーザー行動データ、及びインタラクティブ広告のクリエイティブにおける埋め込み型のモニタリングで得られたユーザーのインタラクティブな行動データなどは、いずれもMintegralの正確な予測の強力な支えとなり、Mintegralの機械学習能力を一層向上させています。
「業務意識」の技術思想で製品の更新を促す
欧米の大手企業との競争の中で優勢を保ち、長期に渡り世界のトップレベルに並んでいくため、Mintegralは製品技術の充実を維持し、国際市場に中国の優秀な広告技術を発揮しています。一方で業務成長のさらなる活発化、製品技術チームの効率よい運営の促進のため、Mintegralは技術チームの「業務意識」の育成にかなりの力を入れています。
王春雨氏によれば、Mobvistaグループ内部では、毎年技術チームに対して「ハッカソン」技術コンクールを開催し、技術チームの「業務意識」の育成と強化を図っているといいます。一人ひとりの技術スタッフがCEOと同じように思考し、会社の業務課題や自身が担当する技術分野について最適なソリューションを提出しています。
技術チームは技術に強い業務意識を持ち、業務について深く理解してこそ、製品要求仕様書を目にしたときに自身の提案を行えるのであって、完全に製品要求仕様書に従って開発を完了させるわけではない、Mintegralは考えています。そしてまさにこの「業務意識」こそが、要求仕様書の質、技術スタッフの要求に対する理解の深さ、製品技術能力の充実、チーム自体の成長及び会社の後続業務の発展などの面で、Mintegralを向上させ続けているのです。
おわりに
将来の広告技術の発展のトレンドに話が及ぶと、王春雨氏は、5G技術のカバー率と利用率の上昇が広告業界に大きな変化をもたらすだろうと述べました。AR、VRといった広帯域、低遅延に依存した広告パターンが次第に普及していくといいます。また、5G技術はプリロードを必要としないため、既存の動画広告とインタラクティブ広告のユーザーエクスペリエンスも向上します。例えば、プレイアブル広告は「クラウドゲーム」の方式でユーザーに直接ゲームを体験させるようになり、関連する素材の制作などは必要がなくなります。
王春雨氏は、「こうした非常に重要な変化に直面し、Mintegralは技術の趨勢に歩調を合わせてイノベーティブに試みはするが、今後1年間は、アルゴリズムモデル、データの蓄積など基盤力の最適化に技術の重点を置く」と述べています。結局のところ、業界のトレンドの焦点は、基盤力の発展にかかっています。基盤力が十分に強ければ、新技術が出現しても、当然関連する製品をすばやく作り出すことができるのです。