広告業界では、広告トラフィックの販売や測定の方法について透明性が欠けていると指摘されています。GDPRやCOPPAといった法律によりデータやプライバシーの保護に進歩があるにもかかわらず、透明性についての全体像はほとんど変化してきませんでした。
その一因は、プログラマティック広告、あるいはその他のアドテクの機能が極めて複雑であることです。毎日何十億ものインプレッションを管理する自動プロセスには、物事をよりシンプルで明快にする普遍的ソリューションなどありません。ですから、広告業界が抱える課題は必ずしも透明性を提供する意図の欠如ではなく、その提供方法なのです。
IABやMMAといった組織が、ads.txtのような透明性向上ポリシーを構築すべく継続的に努力してはいますが、厳格な法律がなければ行動する責任は個々の企業にあります。はがゆいことに、広告業界の一部の人々がデータを収集し使用する方法が大きな要因となって、オンライン広告全体に対する信頼が低下しています。
それはデジタル広告がいっそう複雑になり、パフォーマンス測定やコスト対策に注意が向く一方で、透明性が二次的な関心事になっているからなのかもしれません。そうであれば課題は、どうすればそうした違法な情報収集が起きないようにするための方法です。
オープンソース化がMintegral、顧客、広告業界にメリットをもたらす理由
SDKをオープンソース化し、誰もがその機能を確認できるようにするという当社の決定は、単に自社の透明性向上のためのものではありません。これは広告業界として広告主の信頼を獲得するために、業界全体で取り組むべき事柄であると信じています。
透明性が高まれば監視も厳しくなります。オープンソースソフトウェアは誰もが自由に使用、分析、変更、改善できるコードです。今後、Mintegralのクライアントはコードを監査し、自社のニーズに基づいてSDK機能を調整できるようになります。アプリ詐欺に適切な注意を払うセキュリティ会社や利害関係者も同様です。SDKのコードプログラムをそのまま開示するのは、悪意ある、あるいは望ましくない機能が存在しないことをディベロッパーや提携企業に示し、安心してもらう最善の方法です。
Mintegral SDKはすでに何千ものモバイルアプリで使用されています。それをオープンソース化すれば、アプリの使用者であれ誰であれ、プログラムの動作すべてを確認できます。これは、ディベロッパーがアプリに統合した場合のSDKの機能を厳密に確認できるだけでなく、第三者がコードや望ましくない機能を挿入してSDKをハイジャックするリスクがずっと低くなることをも意味します。アプリ改変防止のための労力やコストを削減できるため、ディベロッパーにとって朗報と言えます。
Mintegralには、不正防止対策を実施し、広告主への透明性向上に取り組んできた実績があります。App-Ads.txtをしっかりと適用し、IABテックラボからopen measurement SDK認定を受けました。COPPAとGDPRの両方に準拠し、今年はさらに、IABテックラボの別の取り組みであるSellers.jsonとSupplyChain objectのサポートを追加して、パブリッシャーのインベントリーの透明性を高めました。
さらなる良いニュースとしては、8月末にMintegralの親会社であるMobvistaが正式にSOC2 Type 1の認定を受け、顧客や提携企業とのビジネスにおいてシステムのセキュリティ、可用性、処理のインテグリティの承認基準を満たしていることが認められました。Mobvistaは、業界で初めてSOC2認定を取得したモバイル広告会社になりました。
Mintegralは常に、データのプライバシー、セキュリティ、透明性を提唱しており、SDKをオープンソース化するという決定は、Mintegralの継続的な取り組みの一環です。
オープンソース化はいくらかリスクをもたらすとはいえ、はるかに大きな報いを与えてくれる
MintegralのネットワークSDKをオープンソース化するプロセスの一環として、一部のイベントトラッキングをコードから削除しました。これらのイベントを削除すると、ユーザーがデバイスでどのように広告を表示しているかについて得られる情報は少なくなるので、SDKが生成する広告のレコメンデーションに影響を与えます。とはいえ、Mintegralの広告レコメンデーションエンジン―SDKとは別個のもの―の進化により、我々を選択してくださるディベロッパーや広告主の皆さまに、より良いユーザーエクスペリエンスを提供できると確信しています。
SDKコードをオープンソース化する主なリスクとは何でしょうか。それは第三者が情報を悪用して、独自の悪意あるコードを挿入する方法を探ったり、バックエンドサービスとデータにアクセスするための潜在的脆弱性を探したりすることです。当社は自分たちのセキュリティ対策がいかに堅牢かをすでに知っていますが、それでもネットワーク攻撃防止能力を強化し続け、リスクを可能な限り最小限に抑えてゆきます。
私たちは広告主とディベロッパーが提携企業を選択できる市場でビジネスを行っています。透明性を高める我々の取り組みの結果すべてはポジティブなものになると確信しています。何も隠していないことを示すことで、単なる言葉ではなく行動によって、透明性を高めるという非常に公的な取り組みを行っているのです。
他のアドテク企業はどのようにオープンソースを採用しているか
アドテク分野では、Mopub、Appodeal、AdMob、Adjustといった少数の企業が、オープンソースライセンスによってSDKの一部または全部を利用可能にしています。今やMintegralも、モバイル広告エコシステム全体の透明性を高めるオープンソースSDKの広告ネットワークになりました。
これらの企業はすべて透明性と信頼の重要性を理解しており、とりわけブランドの安全性と評判をアルゴリズムの手にゆだねている状況で、オープンソース化というアプローチを決定しました。とはいえ、SDKの大部分は今も非公開です。
しかし、独自の透明性レベルを設定する未来志向の企業に頼れば、業界は発展します。GDPRとCOPPAがプライバシーへの取り組みを企業に要求し、最終的に必要な変化を強制したのと同様な方法で、今や、データの透明性を高めるより強力な行動を取るべき時なのです。
業界全体が抱える透明性の課題が短期間で解決されることはないでしょうが、良いニュースは、正しい方向への動きが見られ、関係者すべてはそちらへ向かって歩めるという事実です。ブランドを守り、広告詐欺を抑制し、ブランド、代理店、プログラマティックパートナー間の関係を向上させ、消費者データの使用法を明確にする措置を講じることで、広告業界の透明性が向上します。
より多くのアドテク企業が、未来へ向かうためにオープンソース化を採用できない理由はありません。Mintegralとしては、同業アドテク企業がこのイニシアチブに参加するよう働きかけ続け、そうすることで、モバイル広告エコシステム全体の透明性を高めてゆきたいと考えています。