4 月 21 日に開催されたオンラインセミナーで、私たちはパートナーである面白法人カヤック様、Cybergate 様、Tenjin 様、そして Dwango 様と共に、2021 年の中国におけるモバイルカジュアルゲーム市場でいかに成功を収めるか、というテーマでディスカッションを行いました。
オンラインセミナーは、Mintegral の日本ゼネラルマネージャーである Jane Ye によってファシリテーションされ、下記のゲストスピーカーにご登壇いただきました。
- 村上 雅哉 氏 面白法人カヤックプロデューサー
- 下山 恵 氏 Cybergate 日本マーケティング担当
- 田口 誠 氏 Tenjin, Inc. Head of Sales in APAC
- 永山 隆浩 氏 DWANGO CO., Ltd Head of AdTechnology Dept.
- Cynthia Mintegral APAC Regional Director
前回のオンラインセミナーの要点整理①の概要に引き続き、今回はオンラインセミナーのゲストスピーカーである面白法人カヤックプロデューサーの村上 雅哉氏による「 中国ハイパーカジュアルゲームにおける中国市場へのマーケティングポイント」についてご紹介いたします。
ハイパーカジュアルのビジネス
1、ハイパーカジュアルのビジネスの鍵
これからハイパーカジュアルビジネスとマーケティングの基盤となる部分から、中国市場への展開戦略にかけてご紹介いたします。最初に3つの基本的なポイントをお話できればと思っております。
ハイパーカジュアルで、特に重要になっている事の一つが、CPIを小さくしてLTVを大きくすることです。ユーザー1人当たりの売上(LTV)が、ユーザー1人当たりの広告費用(CPI)を上回る限り、広告を出稿し続け多くのユーザーに届ける、というのがハイパーカジュアルビジネスの基本になります。
もう一つ重要なファクターは、データドリブンです。クリエイティブの発想・着想には直感的なひらめきも重要になりますが、それよりもマーケットにトレンドや開発したプロトタイプ、運用タイトルから集計したデータを元に意思決定を行うことが、ハイパーカジュアル の開発・運用においては重要となります。
最後に、もう一つ忘れてはいけないのは、高速で PDCA を回すことです。CPI <LTV を満たすようなゲームを作ることは容易ではありません。常により低い CPI、より高い LTVを追求するために、データドリブンを前提に PDCA のイテレーションをいかに早く回せるかということが成功の鍵を握っています。
その結果として、利益の部分(ユーザー数×(LTV‐CPI))になってくるのですが、ここの利益をいかに最大化できるかを追求しているのが、ハイパーカジュアルのモデルになっています。
2、開発は大きく3つのステップ
ハイパーカジュアルのビジネスにおいては、まず最初に世に出せるゲームを試行錯誤して開発していくところから始まります。開発は大きく 3 つのフェーズに分けることができます。
まず最初は、プロトタイピング(prototyping)です。ゲームの企画が出る際に、ゲームプロトタイプ段階のゲームを作って、それを少額でテストプロモーションして、広告のパフォーマンスを CPI によって測定します。その結果によって、ゲームのスケーラビリティの可能性があるか否かを大まかに測ります。そのとき重要になるのが、目標とする CPIです。規定の CPI に到達しなかった場合は、開発を停止して、抜本的な改善を行うか、新しい企画のプロトタイピングに移行します。
広告のパフォーマンスが悪くないことが分かったら、次にソフトローンチを行います。ゲームのパフォーマンスを図るというフェーズを作ってきます。アプリの 60%~70% ほどを作りこみ、LTV(収益性)を測定します。プロトタイピングで出ている CPI を LTV が超えているかどうかというところを、簡単に改善やテストを繰り返しつつ目指していくのが、ソフトローンチのフェーズです。
そして最後に、グローバルローンチに配信します。例えば GDPR の対応をアプリに組み込むことでヨーロッパ圏へ配信できるようにしたり、中国語など英語以外の言語にローカライズを行なうなどをして、全世界へ配信を始めます。
また並行して、CPI や LTV も現状に満足するのでなくて、より最適なものを目指して改善し続けていくことも行っていきます。
そしてグローバルローンチまでこぎつけたタイトルについては、大きく二つの運用の軸があり、ゲームの改善・マネタイズの部分と、広告運用・ユーザーアクイジションが重要になってきます。
ハイパーカジュアル ゲームのマーケティング
ハイパーカジュアルゲームは広告収益が基本となるため、課金市場ではなく広告市場の規模がどのぐらいであるのかを見ることが重要です。ユーザー数を最大化するために、市場が最も大きい英語を基本にして全世界へ一緒に配信し、英語が公用語ではない中国・日本の市場については、ゲームと広告をローカライズし対応していくことが多いです。
Tenjin のベンチマークレポートによると、iOS のユーザー数はアメリカ、日本、中国が多い状況になっています。中国ではアンドロイドの利用者が多く 7~8 割になっていますが、一方でストアが乱立して Google が参入できないところがあるため、計測が難しかったり、参入が複雑になっているのが中国市場の特徴です。
1、中国語へのマーケティングチャネルの確保
ハイパーカジュアルでは基本的に AppStore や GooglePlay ストアを通じて全世界に一様に配信しますが、中国では少し例外的な対応が必要になってきます。
その理由の一つは、中国では Google のサービスが利用できないため、400 を超えるアンドロイドのローカルストアが存在しているためです。
もう一つは、海外法人によるプロモーションが難しい・配信できない媒体が存在するので、そこも一つの障壁になっています。
最後に、特に課金要素が入っているゲームの出版については、中国政府の認可が必要になるので、これは海外法人の取得が不可能です。
以上を鑑みると、パブリッシングやプロモーションにおいては、現地法人への委託が総合的にみて利益が大きいと判断するケースが多いという現状になっています。
2、ユーザー獲得おいて最も大切なこと
ユーザー獲得おいて最も大切なこととして、大きく二つのキーポイントがあります。
一つは一瞬でわかることです。ハイパーカジュアルは長くても 30 秒、短ければインタースティシャル広告は 5 秒ほどでスキップできるので、その5秒の間にいかに面白さとかゲーム性を伝えることができるのか。たとえば、ゲーム性がそのためにシンプルであることや、広告に余計な要素を含めないことが重要になってきます。
もう一つは、ゲームにおいては「面白いこと」が大切です。短い時間の中でコンパクトに新しいことを伝えるかどうか、あるいは理性や本能を刺激する要素がちゃんと広告の中で伝え切れているのかどうか、5秒の中で伝えきれているのかどうかが重要になってきます。
3、ゲームの魅力を最大化するのはどのパターンなのか
様々なパターンを試して、ゲームの魅力を最大化するのはどういったクリエイティブなのか。大まかな戦略の流れとしては、まずは、成功パターン、失敗パターン、対決パターン、実写パターンのような粗い基本構成から試します。その中で、失敗パターンがいいことが分かれば、更に失敗をギミックで表現するのか、車だけ見せるのか、NPC で見せるのかといったことを試していきます。そこから、車だけで見せるほうが良いということが分かれば、背景、BGM /SE、文言、ワイプなど細かい要素に注目していきます。そのため、大きな構成から細かいところに向けてチューニングテストを回していく、というところが基本的なクリエイティブ戦略になります。
4、クリエイティブ広告事例
ひとつ具体的なクリエイティブ広告事例をお見せできればと思います。これは中国で展開して、パフォー マンスの良かったケースの動画です。中国市場への配信については委託することが多く、このケースでは Mobvista に委託させていただきました。Mobvista には中国市場に最適化されたような構成で作っていただきました。
中国でよく回っている広告はいくつかの特徴があります。一つは 20〜30 秒の中に簡単なストーリー性があるものです。もう一つはテキスト字幕やピッチの上がったボイスが付いているようなものもあります。また、謎めいたコミカルな熊やパンダなどのキャラクターなどもよく登場します。
もう一つの事例としては、日本語のローカライズでストアランキング1 位を獲得した、カヤックが作ったクリエイティブをご紹介します。2 台の車を操作して失敗を繰り返す動画ですが、テキストのみ変更して違いをつくっています。どちらのパフォーマンスが高いでしょうか。結論としては、右の「うまく駐車できない」というテキストよりも、左の「10 %の人しかクリアできない」というテキストに変更した時に、次第にストアランキングが上がり、日本でトップ1になりました。ちなみに英語バージョンでも同じ文言でOnly 10 %〜というような動画も作ったのですが、日本ほどパフォーマンスは伸びませんでした。文言のニュアンスの伝わりかたが国によって変わったり、それによって CPI に大きく影響することがわかる事例となりました。
そのほかには、ゲームそのもののテーマ性の影響があります。
ゲームそのものがどういった地域に好まれるかという指向性のようなものがあり、例えば、アメリカンフットボールのようなものは欧米に好まれますが、アジア圏ではあまり流行りません。一方で、カヤックで作った「Noodle Master」というタイトルですが、こちらはラーメンを作るのがテーマになっていることもあり、他のタイトルに比べて中国での露出が大きいことがわかりました。ゲームの性質に応じて、地域に合わせたマーケティング戦略をとっていくことも検討要素の一つになっています。
市場の今後
中国の存在感はより大きくなっています。App Annie 様のレポートの通り、今ゲームアプリ市場の上位を占めているアメリカや日本と比較しても、中国はより急速な成長を続けています。そのため、中国へのチャネルを確保して、ローカライズ・カルチャライズを適切に行うことの重要性はより大きくなっています。
もう一つは、トレンドとしてハイブリッドなゲームの出現です。ここ数年、多くの会社がこの市場に参入してきてきており、ハイパーカジュアルタイトルが飽和状態にあります。その中には、質の高いリッチなタイトルも出てきている状況があります。広告収益がハイパーカジュアルの基本にはなるのですが、課金収益の導線も備えたタイトルの出現が増えてきており、それをハイブリッドのハイパーカジュアルゲームと呼んでいます。そこではプロダクト作りが長期化したり、マーケット攻略のアプローチが変化してゆく可能性も大いにあるため、こうしたトレンドもウォッチしていくことが重要になってきます。
まとめ
- データ・ドリブンで高速に PDCA を回し、LTV と CPI の改善を続けていくことが基本です。
- ユーザー獲得においては「わかりやすく」「面白く」を常に念頭におくことが重要です。
- 中国市場は主要な構成要素であり、マーケティングチャネルの確保やカルチャライズなどが 重要になってくると予想されます。
- 市況は時事刻々と変化するため、常に最新の情報に触れることが重要です。
さらに詳しい情報やご質問がありましたら、どうぞMintegralチームにへお気軽にお問い合わせください!